ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 荻上 チキ

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ウェブはリバイアサン(怪物)である。人の道具であったものが私たちの欲望を尻目に成長しウェブ自体が「生態」をもち人に牙を向く。

パソコン黎明期時代にまさかパソコンによって職を追われたり、パソコンが秘密をばらまき自殺に追い込まれたりパソコンでもって強盗殺人事件が引き起こされたり。このような事はは思いもよらなかったはずだ。確かインターネットに侵入して核ミサイルが誤って発射されるなんて映画があったような気がする。まさか核ミサイルが落ちてくるなんてのは絵空事だが、自分の私的な写真が世間に知られる無限にばら撒かれるることはとても身近である。
もちろん、原因があって結果がある。原因も結果も人である。が、リバイアサンであるパソコン(ウェブ)が
それをもたらせたと言える。

欲望が先かメディアが先なのか。必要な事、物がありメディア、ツールを作ろう当初は考えた。
が、メディア、ツールがあるからそれに自分を合わているのではないか。皆日記を書きたかったのだろうか。MIXIで日記のシステムがあるから日記を書こうとするのではないか。私の聞いている音楽を皆に分かってほしかったのだろうか。MIXIプレイヤーがあるから自分のよくきく音楽をあえて聴こうとししてはいまいか。

これを本書では「メディアはマッサージである。」というフレーズを紹介している。メディアによって人々の欲望がアウトプットされマッサージの上変化し、方向付けられていくのだ。

インターネット以前とインターネット以後でどうかわるのか。インターネットにより多くの人が自分の意見を表明できるようになった。これにより少数派の意見も集合の中に加わり真の民主主義が実現できる。そういったユートピアが到来するといった明るい未来が描かれていた
ように思う(インターネット以前パソコン通信時代
pc-van niftyサーブ の掲示板だったかを覗くとエロ・アダルト・エロ・アダルト・エロ・・・・・・・・・・で占められていてげんなりした)が、ご存知のとおり極度にネガティブで罵詈雑言が繰り返されている。そうして罵り合い(フレ−ミング)の果てに何も生産的なものが生まれないことがアメリカの憲法学者キャス・サンスティーンは『インターネットは敵か』の中でサイバー・カスケード。多くの水が流れ込みそこに滝が出来、滝ができることによってさらに水が流れる。ある集団行動が
さらなる集団行動、現象を引き起こす。社会心理学のリスキーシフト。タカ派に意見が流れるが似ている。

今日では、炎上と祭りと呼ばれている。「東芝クレーマー事件」などはパソコンを利用して世間(ネット世論?)を動かした走りだったのでは。当人に世間刃が向けられることになったが。

ウェブはリバイアサンなのだろうか。リバイアサンに合わせ人が変容していくのは間違いない。つまり馴れ。予測もしない被害が出るのだがそのスケープゴートを乗り越え学んでいくのだ。もちろんリバイアサンも育っているのだが。餌はふんだんに散らかっている。願わくば自分が餌にならぬようリバイアサンの息遣いに耳を欹てよう。
以下に本書から気になったキーワードを挙げる。             

○エコーチェンバー 世間では全く小さな意見、関心であり現実では身近に話す人がいない話題でもウエブでは瞬く間に探すことが
出来る。音の反響室のこと。
小さな囁きでも反響によって大きくすることが出来る。

人は自分のこのむ意見しか聞きたがらない。右派の人は右派の本を買い続き左派の人は左派の本を詠み続ける。フェミニズムなども
同じ。

○集団分極化 集団で討議する場合対立する意見に歩み寄るよりもともと持ち合わせていた意見を強化する。

ドラえもんの例。 のび太がドラえもんに泣きつく→道具を4次元ポケットから出してもらってジャイアン、スネ夫に仕返し→道具
を使いきれずしっぺ返しをくらうのび太。
→ ばかだなーーのび太君。→のび太がドラえもんに泣きつく。 このような循環構造。

パソコンをかった人がやたらとワードで張り紙作ったりエクセルで家計簿つくったり。いやいいことだと思いますが。PCぐらい買わ
なきゃといって使わないよりはもととらなきゃね。

○行動を変容させる手段 1.法律で禁じる。2.社会的な規範で抑制させる。3.経済的な制約。最後はアーキティクチャ(環境
技術的な力)
.このアーキテクチャは物質的条件・技術的条件・社会的条件・生物的条件などで誘導するもの。例として、タバコのフィルター材
質を変えることにより喫煙を増加、減少させる。
わざと硬いいすにして客の回転率をよくしたり。これらが現代では大きな影響力を持っていてフランスの哲学者、ジル・ドゥールズ
環境管理型権力と呼んでいる。

これは良いね知らず知らずのうちに管理されているけど禁じられた感がなく誘導しやすい。社会的な規範だとあえて規範を破ること
に向かう人が必ずいるし、経済的な制約だと文句がでます。

○ネットの社会心理だ。流言飛語。ベルリンの壁豊川信用金庫事件からハイパーリアリティー。デマが拡大しリアルに近づき実現
してしまう。予言の自己成就。ネットのデマ「ファンタゴールデンアップル論争」「ラピュタの本当のエンディング」「社民党
首、お粗末発言」

サイバーカスケードの仕組み、サイバーカスケードの個別ケース

フーコーは権力は上からあたえられるものではない。わたしたちの中から萌芽していくものだという記述があったが全くそのとおり
だ。BLOG、MIXIに自由なことを書けはしない。
炎上につながり、ネチズン(ネット市民)の総意で私刑が加えられる。私たちは私たち自身によって権力を作り上げているのだ。

○ウエブの「可視化」「つながり」

○情報操作 情報操作を行う専門家をスピンドクターという。(ヤングマガジン連載中の「喧嘩上等」でも2chを模したやりとり
で世論誘導ゲームなどが登場している。それはさておき件の大沢あかねディフェンスは笑いました。)
「祭り」が「奉る」からさらに熱狂すれば「政(まつりごと」になりかねない。

○批判の語彙 本当に批判したい理由は自分にも分からないが多くの人が批判のお題目としてあげている「今の政治家は信頼できな
い」「若者がおかしい」「社会が悪いのでしょうか」
など決まりきった定型分から選び出してしまうこと。