特別養護老人ホーム ルミエール内部告発その後

 札幌市白石区の特別養護老人ホームルミエールにおいて虐待を目撃した職員が内部告発をし、逆に施設から名誉毀損で訴えられている件で関連するHPに裁判の様子がのっていましたので転載いたします。

虐待目撃情報を検証せず
施設長証言で、ルミの無責任体質が一層明らかに
 特養ルミエールを運営する社会福祉法人公和会(長沼政幸理事長)が、虐待を内部告発した組合員や札幌地域労組などを名誉棄損で訴えている裁判で、施設側が職員からの虐待目撃の報告を真剣に検証していない実態が施設長の証言で明らかとなりました。

 8月28日、この日の法廷はルミエール施設長の証言をこの耳で聴こうと駆けつけた65名の傍聴者で満席となりました。証言に立った鈴木則子氏は公和会の理事であり、虐待問題発生時は副施設長として介護現場の事情聴取にあたり、虐待の目撃証言を多数得ていました(2005年12月、市の主導で施設長に就任)。

施設長、厳しい追求にボロボロ
 川村俊紀弁護士は、鈴木施設長に対しこれまでの裁判資料を示しながら施設側の虐待事件に対する不誠実な対応を追及、それによって施設側が多くの虐待目撃情報を得ながらも、なんら真剣に検証することなく、逆にこれを隠ぺいすることに奔走していた実態が浮き彫りになりました。
 施設側は虐待事件を否定する根拠に、当事者が「やってない」と述べたことをその最大の理由に挙げています。ところが、K職員による暴行に限ってみても、施設が把握していた7件の暴行目撃事例のうち、虐待当事者に確認したのは多田さんが目撃した入所者Aさん(91歳)への暴行事件についてのみであり、残る6件(5名が目撃)の暴行については何ら検証していなかったことが判明しました。これについては別件の裁判(利用者家族が施設を訴えた件)でK職員が「Aさんの事例以外は施設側から聴取を受けていない」旨を証言しています(しかも、この証言を導いたのは施設側代理人の前田尚一弁護士でした)。

裁判長も鋭い質問
 竹田裁判長が、何人かが「(虐待を)見た」と言っているのに、なぜ虐待の有無を詳しく調べなかったのか、「見た」と言う人に確認したのか、と問い質したのに対し、鈴木施設長は目撃者全員には確認していないことを認めざるを得ませんでした。更に「それは何故?」との再質問には、無言のまま答えられませんでした。
この日の裁判で、鈴木則子施設長はリングのコーナーへ追い詰められるように、自らの当事者能力の無さ、ルミエールの虐待問題に対する不真面目さ、利用者の安全を守るという人権感覚のなさを露呈しました。
2004年6月頃、介護現場からの虐待情報を得たルミエールは「もし、その情報が本当だったら大変なことだ。早急に調査し施設から虐待を根絶しなくては」と動いたのではなく、虐待加害者が「やってない」と全面否定したことに最初から飛びつき、まともな調査もせずに「虐待があったとは断定できない」と結論付けたのです。

ルミエール虐待事件は、なんら解決していない
2004年当時のせっかんのような激しい虐待は無くなったルミエールですが、かつての虐待常習者を介護現場のリーダーに昇格させたり、虐待隠ぺいを推し進めた幹部らによる施設運営が未だに続いています。一方で札幌市手稲区のグループホーム「いちわ」は利用者を壁に向けて正座させたことなどが虐待と認定されて今年3月認可取り消し処分となり、更に7月には東京の特養さくら苑で性的虐待があったとして、その際のトラブル処理にもたついた施設長が解任されました。ルミエールのケースは、この 2つの事例よりもはるかに重大な虐待事件であることは誰の目にも明らかです。
この日の鈴木施設長への尋問を通し、ルミエール虐待事件は本質的に何も解決していないのだ、ということが改めて確認できたと思います。

年収200万円の賃金を査定?
 低賃金かつ悪条件の職場は、労働者の定着率が極めて低くなります。なぜなら、少しでも条件の良いところを見つけた労働者は直ぐ転職するからです。しかし儲け第一の立場で見れば、この状態は常に初任給状態で、しかも3年以内なら退職金も発生せず(有給休暇の付与も抑えられ)、他の施設よりもはるかに効率よく儲かるということに直結します。
ところで、ルミエールは近々賃金の査定制度を導入するそうです。他の法人であれば、虐待を隠ぺいしたという理由でとっくに懲戒解雇になっているであろう幹部らが、自らの悪業を棚にあげ、部下の賃金を査定すると言うのですから驚きです。ルミエールの介護職員の多くは年収200万円台(夜勤手当も含めて!)の実態にありますが、このような超低賃金を査定するというのは、恐らく他の福祉施設では前例がないと思います。自ら招いた不祥事には思い切り甘く、労働者へは乾いた雑巾を絞るかのごとく締め上げる。これがルミエール経営陣のモラルであり、虐待事件を生む背景となったのです。

福祉施設に限らず、熟練労働者の育たない職場、労働者が粗末に扱われる職場は、利用者、消費者、乗客の安全・安心が脅かされるのです。
 

K元職員への尋問、次回も続行


 9月11日、13時30分に開廷したK元職員への証人尋問は、本人の止むを得ない事情で、開廷から僅か30分で終了しました。
 前回の裁判では、「(K職員は)どうせ『やってない』としか証言しないのだから、場合によっては主尋問はやらなくてもいい」などと投げやりなことを言っていた前田尚一弁護士(ルミエール側代理人)ですが、この日の主尋問では、組合が内部告発した5件の暴行事件について、一つずつK職員に「やってない」と答えさせるにとどまりました。川村俊紀弁護士(組合側代理人)による反対尋問は僅か10分で時間切れとなったため、次回期日に持ち越されることになりました。

裁判を傍聴したルミエール元職員の声
何度聞いても裁判の傍聴は緊張し、疲れますね。K君の証人尋問を聞いていたら、何人もの職員が夢や幻を見ていたのか・・・・そんな気持ちになりました。彼が「暴力を振るっていない」と言うだけで、何の処分もせず、虐待問題を放置し続けた施設の責任は重大です。
 職員の教育をせず、主任だけが特養の責任者では、若い職員に対して苦言は言えません。これは現在でも同じです。介護現場の勤務実態を知ろうともせず、副主任だけの報告では公平な判断は出来ません。ルミエールの好む「公平と平等」はあり得ないですね。
 もし彼が話す様に、虐待が「濡れ衣」だと言うなら、彼を「落とし入れようとした」多田さんや坂本さんの処分が必要だったはず。何も真相に近づくこともせず、ただ個人調査を行なってアリバイを作った・・・・・。そんな感想を持ちました。

次回ルミエール裁判
これが最後の証人尋問です


10/16(月)13:30〜15:00札幌地裁8F3号法廷
証人 次回はK職員への証人尋問です --被告(組合と道新)側からの反対尋問
原告 社会福祉法人公和会(ルミエール)
被告 北海道新聞社、札幌地域労組、鈴木一、多田めぐみ、
坂本典子、藤田和恵(道新記者)