蠕蟲舞手〔アンネリダタンツエーリン〕

(えゝ、水ゾルですよ
  おぼろな寒天〔アガア〕の液ですよ)
日は金〔きん〕の薔薇
赤いちいさな蠕蟲が
水とひかりをからだにまとひ
ひとりでおどりをやってゐる
(えゝ、8〔エイト〕 γ〔ガムマア〕 e〔イー〕 6〔スイックス〕 α〔アルファ〕
 ことにもアラベスクの飾り文字))
羽むしの死骸
いちゐのかれ葉
眞珠の泡に
ちぎれたこけの花軸など
 (ナチラナトラのひいさまは
  いまみづ底のみかげのうへに
  黄いろなかげとおふたりで
  せっかくおどってゐられます
  いゝえ、けれども、すぐでせう
  まもなく浮いておいででせう
赤い蠕蟲舞手〔アンネリダタンツエーリン〕は
とがった二つの耳をもち
燐光珊瑚の環節に
正しく飾る眞珠のぼたん
くるりくるりと廻ってゐます
 (えゝ、8〔エイト〕 γ〔ガムマア〕 e〔イー〕 6〔スイックス〕 α〔アルファ〕
  ことにもアラベスクの飾り文字))
脊中、きらきら燦〔かがや〕いて
ちからいっぱいまはりはするが
眞珠もじつはまがひもの
ガラスどころか空気だま
 (いゝえ、それでも
  エイト ガムマア イー スイックス アルフア
  ことにも アラベスクの飾り文字)
水晶体や鞏膜〔きゃうまく〕の
オペラグラスにのぞかれて
おどってゐるといはれても
眞珠の泡を苦にするのなら
おまへもさっぱりらくぢゃない
   それに日が雲に入ったし
   わたしは石に座ってしびれが切れたし
   水底の黒い木片は毛蟲か海鼠〔なまこ〕のやうだしさ
   それに第一おまへのかたちは見えないし
   ほんとに溶けてしまったのやら
それともみんなはじめから
おぼろに青い夢だやら
 (いゝえ、あすこにおいでです おいでです
  ひいさま いらっしゃます
  8〔エイト〕 γ〔ガムマア〕 e〔イー〕 6〔スイックス〕 α〔アルファ〕
  ことにもアラベスクの飾り文字)
ふん、水はおぼろで
ひかりは惑ひ
蟲は エイト ガムマア イー スイックス アルファ
   ことにもアラベスクの飾り文字かい
   ハッハッハ
 (はい またくそれにちがひません
   エイト ガムマア イー スイックス アルファ
   ことにもアラベスクの飾り文字)