野宿者の女性、浜松市役所で亡くなる

◇規定通り「非常食渡し、収容場所探した」/「なぜ…」市対応に憤る支援団体

 浜松市で昨年11月、空腹のホームレスの女性が市役所に運ばれ、福祉担当職員らが取り囲むなか心肺停止状態となり、翌日死亡した。敷地内の路上で寝かされ、市が与えた非常食も開封できないまま息絶えた。「すべきことはやった」と市は説明する。だが、なぜあと一歩踏み込めなかったのか。女性の死は重い問いを投げかけている。【井上英介】

 市によると、11月22日昼ごろ、以前からJR浜松駅周辺で野宿していた70歳の女性が地下街で弱っているのを警察官が見つけ、119番通報。救急隊は女性から「4日間食事していない。ご飯が食べたい」と聞き、病気の症状や外傷がないことから、市役所へ運んだ。

 女性は救急車から自力で降り、花壇に腰を下ろしたが、間もなくアスファルト上に身を横たえた。連絡を受けていた同市中区社会福祉課は、常備する非常用の乾燥米を渡した。食べるには袋を開け、熱湯を入れて20〜30分、水では60〜70分待つ必要がある。

 守衛が常時見守り、同課の職員や別の課の保健師らが様子を見に訪れた。市の高齢者施設への短期収容も検討されたが、担当課に難色を示され、対応方針を決めかねた。

 運ばれて1時間後、野宿者の支援団体のメンバーが偶然通りかかった。近寄って女性の体に触れ、呼び掛けたが、目を見開いたままほとんど無反応だったという。職員に119番通報を依頼したが、手遅れだった。メンバーは職員に頼まれ、救急搬送に付き添った。

 「職員が路上の女性を囲み、見下ろす異様な光景でした」とメンバーは振り返る。「保健師もいたのに私が来るまで誰も体に触れて容体を調べなかった。建物内に入れたり、路上に毛布を敷く配慮もないのでしょうか」。近寄った時、非常食は未開封のまま胸の上に置かれていたという。

 最初に病院ではなく市役所へ運んだことについて、市消防本部中消防署の青木紀一朗副署長は「業務規定に従って血圧や体温などを調べ、急患ではないと判断した。隊員によると女性は病院へ行きたくないそぶりを示した。搬送は純粋な行政サービスで、強制的に病院へ運ぶことはできない」と話す。市の一連の対応について、社会福祉部の野中敬(たかし)専門官は「与えられた権限の範囲内ですべきことはやった。職員たちの目に衰弱している様子はなかった。容体急変は医師ではないので予想できない」と話す。

 死因は急性心不全だった。女性の死亡後、市民団体などから抗議された市は、内部調査を実施。中区社会福祉課の対応について「空腹を訴える女性に非常食を渡し、収容可能な福祉施設を検討した。2回目の救急車も要請した。職務逸脱や法的な義務を果たさなかった不作為は認められない」と結論付けた。

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 ◇死亡した女性をめぐる11月22日の動き◇

12時30分ごろ 駅前交番の警察官が119番通報

13時26分   救急隊が市役所で女性を降ろす

   32分   職員が乾燥米を渡そうとするが、所定の申請書を書こうとせず、渡さずに戻る。上司の許可を得て再び出向き、傍らに置く

   45分ごろ 「水がほしい」と言われ、守衛が紙コップで湯を飲ませる。女性は路上に寝た状態

14時20分ごろ 職員が女性を囲み対応を協議。通りかかった支援者が様子を見て救急出動を要請。保健師が通報の許可を得るため上司を探す

   35分   職員が119番通報

   37分   保健師が初めて脈を調べるが、確認できず

   39分   救急隊到着。心肺停止を確認、病院へ搬送

 (23日1時5分、急性心不全で死亡)

毎日新聞 2008年1月16日 東京朝刊

※割愛せずそっくりそのまま転載いたしました。問題がある場合削除いたします。

この事件を知ったのはまたまた某巨大掲示板のまとめサイトです。皆さん様々なコメントを寄せられています。
私は誰が悪いというつもりはありません。巨大掲示板のコメントであまり野宿者の方について分からないでかかれてる物が少なくありませんでした。かくゆう私も野宿者の現状について知らなかったのです。

『ルポ最底辺 不安定就労と野宿 生田武志 (ちくま新書)』を最近読んで野宿者問題を初めて知りました。自分の住んでいる札幌には野宿者がいないとさえ考えていました。ラジオで野宿者の方が売る雑誌ビックイシューを取り上げ札幌の地下街で販売されているのを目にしました。

野宿者が自己責任だという論調を耳にします。が、自分自身が働けなくなる病気、怪我を負ったときいともたやすく生活が破綻しセーフティーネットの網目から落ちることはほんの隣なのだと感じます。日本の社会保障、国家のあり方に繋がっていくのです。

私はシステムから外れたいと考えた時期がありました。朝起きて会社に行って週末休みという輪から逃れ自分なりに生きて生けるかなと。別に今でいうニートになりたかったわけではないのですが。
でも健康保険料を払わないと医療も受けられないんですよ、ちょっと気のいい人、治してくれない?なんて頼めないし。お腹好いたからスーパーの生鮮こーなーとかで大根かぶりついたらつかまりますよね。貨幣を得なきゃならないんです。ただの紙や、銅や、アルミや。

今思うと馬鹿なこと考えてたなと思いますが実はかなり狭まった生き方しか出来ないようになってるんです。日本では。システムの埒外に落ちると外からはすごい壁が聳え立ってる感じです。

神は死んでますから、人生において意味などなく不幸が訪れる人はいます。偶然にもシステムから落ちた人は70歳にして乾いた米を抱き「急性心不全」とありがちな診断を受けなくなるのですね。寂しくなります。