花まんま 朱川 湊人

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本作は2005年、第133回直木賞、受賞作品である。

作者は2002年「フクロウ男」(オール読物推理小説新人賞を受賞)でデビューの朱川 湊人。

花まんまの舞台は作者が生まれた大阪が舞台となっている。また時代も昭和30年代と、作者が生まれ育った年代と考えられる

Wikipediaには本作品を「ノスタルジックホラー」と分類しているがホラー小説には決して分類されない。
表題作「花まんま」を含む「トカビの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」「送りん婆」「凍蝶」の六編からなる。
どちらかというと民俗学でいう怪異、口伝の世間話に近い。特に「摩訶不思議」「凍蝶」は何らかの説話の形式の様だ。


怪異、奇妙、淫靡(「妖精生物」)滑稽な感も受けるが昭和30年代の大阪下町の情景、在日朝鮮人、同和問題
などの差別も取り上げ怪異譚から当時の歴史ではない生活、習俗を知った。リモコン戦車、ブリキロボット、
お菓子のオマケ(たぶんグリコ)などは私自身の子供時代と重なり懐かしく感じた。

もちろん昭和30年代の習慣、風俗を知るといった意味もあるがこういった小説を私は知らない。怪異、奇妙、冷やりとした怖さでは「きつねのはなし」に軍配があがるが本作には所謂「お話」にあるほのぼのとした暖かさを読者に与えるのだろう。